道路橋示方書改訂の概要


1.「道路橋示方書」改訂の経緯
平成2年版 昭和55年制定以降の調査・研究結果、実績の反映
 
平成4年版 車両大型化への対応、耐久性の向上(活荷重関連規定の見直し)
  ←「復旧仕様」(平成7年 兵庫県南部地震)
平成8年版 耐震設計関連規定の見直し(地震時保有水平耐力法の導入)
 
平成14年版 仕様規定型基準から性能規定基準への移行
  ←「杭基礎設計便覧」、「杭基礎施工便覧」(平成18年版)
平成24年版 平成23年度東北地方太平洋沖地震などの
                  被災事例の分析から得られた知見による見直し、
                  近年の技術開発による新しい構造への対応、
                  施工品質の向上を図るための 規定の設定

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2.杭基礎に関する主な改訂点
(1)「IV下部構造編」
1)新規に規定された工法、構造の追加
橋台ジョイントレス構造、橋台背面アプローチ構造、インテグラルアバット、斜杭構造、回転杭工法、深礎杭工法
2)基礎の設計に関する事項の見直し
鉄筋の許容応力度、現場溶接部許容応力度、
水平変位の制限を緩和する杭基礎、杭頭接合部の設計等
3)施工管理、施工性向上に関する事項の追加
試験杭、ソイルセメント柱の造成(プレボーリング工法、鋼管ソイルセメント杭工法)

(2)「V耐震設計編」
1)レベル2地震動(タイプT)の見直し
2)地震の影響を支配的に受ける部材に求められる基本的事項を明確化
3)液状化地盤上の橋台基礎に対し、レベル2地震動に対する照査方法を規定

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3.「VI下部構造編」 杭基礎の設計に関するポイント
(1)橋脚基礎の設計フロー 【 IV編 12.1 】

※ 基本的な設計照査の流れは、従来と同様。
図-1 橋脚基礎の設計フロー


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(2)鉄筋の種類、許容応力度の見直し【W編4.3】
下部構造での使用実績がほとんどないSR235及びSD295を削除し、近年その使用実績が増加し技術的知見が蓄積 されたSD390及びSD490が新たに追加された。 SD390及びSD490の適用性の検証実験は、30N/mm2以上の強度を有するコンクリートを用いて実施されているため、 実際に使用する場合には、設計基準強度σck=30N/mm2のコンクリートを適用するのがよい。
表-1 鉄筋の許容応力度
表-1 鉄筋の許容応力度


(3)構造用鋼材の現場溶接部の許容応力度の見直し【W編4.3】
従来、現場溶接部の許容応力度は工場溶接の90%としていたが、適切な施工管理が行われていれば、十分な 溶接品質が確保されることがこれまでの実績から明らかになったため、工場溶接と同じ許容応力度とした。
表-2 構造用鋼材の許容応力
表-2 構造用鋼材の許容応力 注)SS400は溶接構造に用いてはならない

(4)許容水平変位の緩和【W編12.1、12.8】
「 W編 12.1 設計の基本 」
杭基礎の水平変位は、弾性解析により求めることを前提としており、また地盤の硬軟、杭種に関わらず許容水平変位を一定としているため、条件によっては許容水平変位以下とすることによって杭体応力度および鉛直支持力に著しく余裕が生じる場合がある。 このような場合には、橋脚基礎に限り 12.8(5) の規定により照査するのがよい。

「W編 12.8 特殊な条件における杭基礎の設計 (5)水平変位の制限を緩和する杭基礎」
水平変位の制限を緩和する杭基礎
・適用条件
    特に軟弱な沖積粘性土地盤(N値が5未満の粘性土を想定)
・水平変位の制限値
    杭径の3.5%(≦50mm)(橋台は適用不可)
・水平変位の制限を緩和する杭基礎
    鋼管杭、鋼管ソイルセメント杭、回転杭、PHC杭、SC杭のみ
・水平変位を緩和する場合の地盤反力係数
    非線形性考慮(1/2乗則)
・液状化時の適用
    液状化時にも適用可

< 杭基礎設計便覧 による軟弱地盤での杭基礎設計の流れ >


(5)杭とフーチングの接合部【W編12.9.3】
【杭頭の接合方式】
方法A(フーチングの中に杭を一定の長さだけ埋め込む方法)については、近年はほとんど使用されていないことから記述が削除された。
【設計の基本(照査項目の省略】
剛体と仮定できる厚さを有するフーチングに、構造細目を満足するように杭をフーチングに接合することを前提とし、標準的な縁端距離を確保する場合には、杭頭部に作用する押し込み力、引き抜き力、水平力及びモーメントに対する照査を省略することができる。
【仮想RC断面の照査】
仮想RC断面の直径は、鋼管径Dに0.25D+100o(≦400)(D:鋼管径、鋼管ソイルメント杭も鋼管径を加えた値とする。
仮想RC断面は、杭頭接合部の補強鉄筋の応力度照査を行い、コンクリートの応力度照査は省略してよい。
【定着長】
フーチング内、鋼管内の定着長は両方ともに(必要定着長+10φ)以上。但し、フーチング内はフーチング内の下端鉄筋の中心軸位置から定着長を確保する。
【中詰め補強鉄筋を用いた鉄筋かご方式が前提】
施工品質の確保が可能な中詰め補強鉄筋を用いた鉄筋かご方式とする。施工品質の確保が困難な鋼管に鉄筋を溶接することによる補強は用いない
【中詰め補強鉄筋の鉄筋及びコンクリート強度】
SD345の中詰め補強鉄筋では配置が困難な場合は、SD390、SD490を用いる。
その場合はコンクリート設計基準強度をσck=30N/mm2とする。
【斜杭の接合方法(鋼管杭)】
フーチングへの斜杭の埋込み長さは最小部分が100oとなるようにする。鋼管杭がフーチングの下面鉄筋と干渉する場合は、斜杭天端部分を水平に切断する等の処理を行う。


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4.「 X耐震設計編 」杭基礎の設計に関するポイント
(1) 設計地震動 【 X編 2.2 】
レベル1地震動 : 橋の供用期間中に発生する確率が高い地震動(中規模程度)
レベル2地震動 : 橋の供用期間中に発生する確率は低いが大きな強度をもつ地震動
タイプT地震動 : プレート境界型の大規模地震
タイプU地震動 : 内陸直下型地震

(2) 橋の重要度  【 X編 2.3 】  ※従来と同様
 A種の橋 :  重要度が標準的な橋 (B種以外の橋)
 B種の橋 : 特に重要度が高い橋
高速自動車道国道、都市高速道路、指定都市高速道路、本州四国連絡道路、
一般国道の橋、都道府県市町村道の複断面・跨線橋・跨道橋、および地域防災
計画上の位置づけや利用状況等からとくに重要な橋

(3) 橋の耐震性能 【 X編 2.2 】

表−3 橋の耐震性能
橋の耐震性能 耐震設計上
の安全性
耐震設計上
の供用性
耐震設計上の修復性
短期的修復性 長期的修復性
耐震性能1:
 地震によって橋としての
 健全性を損なわない性能
落橋に対する
安全性を確保する
地震前と同じ
橋としての
機能を確保する
機能回復の
ための修復を
必要としない
軽微な修復でよい
耐震性能2:
 地震による損傷が
 限定的なものに
 とどまり、
 橋としての機能の
 回復が速やかに
 行い得る性能
落橋に対する
安全性を確保する
地震後橋としての
機能を速やかに
回復できる
機能回復のための
修復が応急修復で
対応できる
比較的容易に
恒久復旧を行う
ことが可能である
耐震性能3:
 地震による性能が
 橋として致命的と
 ならない性能
落橋に対する
安全性を確保する

表−4 設計地震動と目標とする耐震性能
設計地震動 A種の橋 B種の橋
レベル1地震動 地震によって橋としての健全性を損なわない性能
(耐震性能1)
レベル2
地震動
タイプT地震動
(プレート境界型の大規模地震)
地震による損傷が
橋として致命的と
ならない性能
(耐震性能3)
地震による損傷が
限定的なものに
とどまり、
橋としての機能の
回復が速やかに
行い得る性能
(耐震性能2)
タイプU地震動
(兵庫県南部地震のような内陸直下型地震)

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(4) 耐震性能に対する基礎の照査方法 【 X編 6.3.4, 6.4.5, 12.1 】

表−5 各耐震性能に対する主な照査項目

限界状態
耐震設計上
支配的となる性能
間接的に
満足する性能
主な照査項目
従来の
照査方法
耐震性能1
基礎の力学特性が
弾性域を超えることなく、
基礎を支持する地盤の
力学特性に大きな変化が
生じない限界の状態
耐震設計上の修復性
耐震設計上の供用性
耐震設計上
の安全性
支持力<許容支持力
応力度<許容応力度
応答変位<許容変位
震度法
耐震性能
2or3
副次的な塑性化にとどまる
限界の状態
耐震設計上の修復性
耐震設計上の供用性
耐震設計上
の安全性
設計水平地震力
 <基礎の降伏耐力
作用せん断力
 <せん断耐力
保耐法

表−6 橋脚基礎の照査における照査項目
限界状態 耐震設計上
の性能
照査項目
副次的な
塑性化に
とどめられて
いる状態
耐震設計上
の修復性
耐震設計上
の供用性
基礎の安定及び基礎本体の修復性に関する項目
  • 基礎が降伏に達しない。
  • 基礎の部材に生じる断面力は耐力を上回らない。
基礎の過大な変位
及び残留変位に関
する項目
  • 基礎の安定及び基礎の修復性に関する照査項目の照査により満足される。
耐震設計上
の安全性
基礎の安定の喪失
に関する項目
  • 耐震設計上の修復性ならびに耐震設計上の供用性に関する照査項目の照査により満足される。
基礎の過大な変位
に関する項目
復旧に支障と
なるような
過大な変形や損傷が
生じてない状態
耐震設計上
の修復性
耐震設計上
の供用性
基礎の安定及び
基礎本体の修復
性に関する項目
  • 基礎の応答塑性率が許容塑性率(4)以下となる。
  • 基礎の部材に生じる断面力は耐力を上回らない。
基礎の過大な変位及び
残留変位に関する項目
  • 基礎天端での応答回転角が基礎の回転角の許容値(0.02rad)以下となる。
耐震設計上
の安全性
基礎の安定の喪失
に関する項目
  • 耐震設計上の修復性ならびに耐震設計上の供用性に関する照査項目の照査により満足される。
基礎の過大な変位
に関する項目
従来は変位の制限値 40cm、回転角の制限値 0.025rad であったが、回転角のみの規定となり、許容値は 0.02rad となった。

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(5) 土質定数の低減係数 【 X編 8.2.4 】

表−7 土質定数の低減係数DE
FLの範囲
地表面からの深度x(m)
動的せん断強度比R
R≦0.3
0.3<R
FL≦1/3
0≦x≦10
1/6
10<x≦20
1/3
1/3
1/3<FL≦2/3
0≦x≦10
1/3
2/3
10<x≦20
2/3
2/3
2/3<FL≦1
0≦x≦20
2/3
10<x≦20

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(6) 地震時土圧 【 X編 6.2.4 】
地震時土圧は分布荷重とし、修正物部・岡部式を用いて算出する。

 pEA=γxKEA+q'KEA

ここに、 pEA : 深さx(m)における地震時主働土圧強度(kN/u)
     KEA : 地震時主働土圧係数
           1)背面が土とコンクリートの場合
               砂および砂礫 KEA=0.21+0.90kh
               砂質土    KEA=0.24+1.08kh
           2)背面が土と土の場合
               砂および砂礫 KEA=0.22+0.81kh
               砂質土    KEA=0.26+0.97kh
     kh  : 地震時土圧の算出に用いる設計水平震度
     q'  : 地震時の地表載荷荷重(kN/u) (活荷重は含まない)

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(7) 液状化地盤における橋台基礎のレベル2地震時の設計 【 X編 13.1〜13.5 】
液状化が生じると判定される地盤にある橋台基礎に対し、地震時保有水平耐力法により レベル2地震動に対する照査を行う。但し、橋の機能の速やかな回復が著しく困難とならないと判断 された橋( 例えば、橋長が 25m以下 の単径間の橋 )や、構造形式上大きな変位が生じないと判断さ れる場合はレベル2地震動に対する照査を省略してもよい。
橋台の設計フローを 図−4 に示す。
設計照査の基本的な考え方は橋脚基礎と同様であるが、許容塑性率は3を目安とする。


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